作業工程

 

 

乾漆

 

 

乾漆(かんしつ) 石膏01 (乾漆図解はこちら

 

今日は乾漆の原形を石膏で成形しました。年に1回、向こう1年分の乾漆素地を作ってしまいます。

滅多にない作業なので、記録しておこうと思います。

水指(お茶道具)の原形 径16.5×高さ17cm

 

円柱のものはプラ板でひき型を作り、成形します。

 

四角形のものは木枠に石膏を流しこみ、完全に乾いてから(2〜3日後)、曲線を成型します。

木枠は釘で止めてありますが、組み立ては一人では意外に難しい作業です。

たまたま父親が居なかったら作業はかなり難航していたかもしれません。

 

木枠はガラス面などに接する面は鉋とペーパーで直角を出しておかないと石膏が流出してしまいます。

盛器の原形 横63×縦19cm

短冊箱(蓋)の原形 横40×縦11×高さ8cm

木枠から外したもの

水指と盛器、短冊箱の蓋と身を各1つずつ石膏を流しこんで、今日はおしまい。

明日もう1つ流しこんで、汚れたガレージを大掃除して終了です。 石膏作業の時に一番気をつけなればいけない事は、石膏を水道で洗い流さない事。

いつか下水管が詰まって、大変な工事になるらしい。 

 

石膏を溶いた容器や汚れた手はバケツの汲み置きした水の中で洗い、沈殿させて固形のゴミとして処分します。

(2006.1.12)

 

 

 

乾漆 石膏02

 

四角い形は最初に木枠に石膏を流し込んでから、精密な成形をするのですが、石膏が十分に乾燥していないと、鉋やペーバーに石膏が付き過ぎて、作業になりません。

 

被せ蓋の場合、石膏は蓋と身が必要で2個で1セット。

印籠蓋の場合、石膏は1個、乾漆工程後に切断し、蓋と身に分ける。

さん蓋の場合、身だけを乾漆で作り、蓋は木を削り制作。

私の作品はほとんどが被せ蓋です。

 

今年は石膏作業が、上達したなと思える時が何度かあったので、石膏部分の薄さを追求したら、色んな所が割れて、継ぎ接ぎだらけ石膏になってしました。箱が終わったら、盛器も一つ作ってみるつもりです。

 

石膏作業は、イメージしたものが形になる、一番最初の工程なので、面倒臭いけど楽しいです。

成形途中

 石膏干し

(2006.9.20)

 

 

 

乾漆 石膏削り出し

 

直方体だった石膏を鉋と紙やすりで削り、自由な形に成形しました(手前3個)。

成形する時は、アクリル板で型を作り、それを定規代わりにして、誤差のないよう、製図に忠実に仕上げます。

 

漆の仕事は特に「次の工程で修正しよう」という考えが通用しません。その場凌ぎ的な対処をすると、後で必ず影響します。

この一番初めの原形作りは特に重要なので、削り出しの作業に2日間を費やし、丁寧に仕上げました。

 

経験を積むほどに、一つ一つの工程をきちんと仕上げるように心掛けるようになります。

作業によっては面倒に感じる時もありますが、何百年も受け継がれた伝統技法に無駄は無く、省略できる工程はないと痛感する事もしばしば。

 

成形が終わると、白玉粉の糊を石膏表面に数回に分けて塗り、最初の工程である砥の粉錆(最もキメの細かい下地)をつけました。

後は単調な作業が当分続くので、作業としては軌道に乗ったと言えます。

成型が終わった石膏型

砥の粉錆を付けた石膏型

 (2006.1.29)

 

 

 

乾漆 布貼り

 

布貼り作業になりました。

 白玉粉を炊いた糊と漆を合わせて糊漆を作ります。

糊漆に"輪島地の粉"を少し混ぜて、器物に麻布を貼っていきます。

 糊漆は乾燥が早く、6時間もあれば乾いてしまいますが、芯まできちんと乾かしたいので、1日1工程と決めています。

翌日、余分な布を切り落として、布目の間に糊漆と地の粉を擦りみ、出来るだけフラットな面を作ります(「布目擦り」)、更にその翌日に次の布を張るといった具合で5〜7枚の布を貼ります。

この布が木の代わりの素地になります。

 

麻は繊維の芯まで漆が浸透せず、これがかえって頑丈な素地になるとの事です。割れるという事はまずありません。

乾漆の良い所は、自由な形が気軽に作れる所と、木地よりも耐久性に優れている所です。

しかし、木地より若干重く、厚みも大体均一になってしまいます。

 

私は木地を使う事もありますが、最近は乾漆が多くなっています。

圧倒的に手間がかかり大変ですが、乾漆の方が素地としてそれなりの価値があるので、出来るだけ乾漆のものを作りたいと思っています。

 

白玉粉糊と生漆

 

 

布張り後

(2006.2.16)

 

 

 

乾漆 足付け

 

乾漆素地にそれぞれ足を付けました。

 

左の短冊箱は合板で、右の盛器の方は乾漆で作っていたものを接着しました。

器物の形はこれで完成で、後は下地作業を進め、

石膏型から離すと、乾漆素地は出来上がりです。

 

合板(=ベニア板)に、あまり良いイメージを持たない方もいますが、木が反ったり狂ったりしないという良い点もあります。

 

香川県在住の重要無形文化財の磯井先生は、合板を重ねたものを刳り、素地とする技法(積層)を考案した事で有名です。先生の作品の大半はこの積層素地です。

左;短冊箱の身、右;盛器

 

 

私は香合などの小物はたまに積層素地もしますが、今回のように乾漆の足など部分的に取り入れる事がほとんどです。

(2006.3.2)

 

 

 

乾漆 脱石膏

 

今日、乾漆を石膏型から外す事が出来ました。最終的に型から外すものを脱乾漆と呼びます。

水指

半日ほど水に漬けておくと、石膏の表面に塗っておいた白玉粉糊が溶けて、盆(左)のような形のものは簡単に外れます。この場合、また同じ石膏型で乾漆を作る事が出来ます。

下の水指や短冊箱のようなもは、石膏型を壊すより他ありません。

水に長時間漬ける前に端を綺麗に処理して、その部分に生漆を付け、水が内部に浸透するのを防ぎます。

石膏型から外すと器物が軽くなって、作業しやすくなります。内側の手直しが済むと、ようやく漆の塗り重ねが始まります。

 

 

 

 

短冊箱

(2006.3.17)