2006年 4月→ 6月

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彫漆02  〜きさげ〜

 

彫刻刀で彫った後は、きさげで表面を削り、出来るだけ凹凸を無くします。

 

彫った曲面に合わせて、刃先のカーブが異なった数種類のきさげを使い分けます。

きさげも彫刻刀と同様に、切れ味が落ちるとすぐに研がなければいけません。きさげ工程を綺麗に仕上げると、次の研ぎ工程がかなり楽になります。

 

きさげは彫刻刀より研ぎは簡単です。

肘と手首の角度を固定して、きさげは60度、彫刻刀は30度位の角度で研ぎます。

きちんと研げている時は、刃が砥石の上で安定し、刃全体が研げている手応えがあります。

そうなると、少し研ぐだけで、よく切れます。

 

(2006.6.18)

彫り

きさげ後

きさげ刀

 

 

 

彫漆01  〜彫刻刀〜

 

塗り重ねが終わると、彫りに入ります。

数ヶ月かけて塗り重ねた層を彫るにあたり、失敗は許されません。

 

彫漆技術は彫刻刀による部分が最も大きいと思います。切れない彫刻刀は自在に操れないので、失敗の元です。全ての彫刻刀がきちんと研げるようになるまで5年かかりました。バシッと研いだ彫刻刀で、何十回も塗り重ねた層をザクザク彫っていくのは本当に気持ちが良いものです。

面倒なようでも、少しでも切れ味が落ちったら、研ぎ直す方が結果的に楽です。ちなみに右の作品を仕上げるのに丸刀は100回以上研ぎました。

 

 

彫刻刀の後にいくつか工程があるので、少し残し気味でやめておきます。しかし、残し過ぎると後の工程で負担になります。

 

彫刻刀は刃の部分を買って、自分で柄をつけます。

私は全種類、全サイズを揃えているわけではありませんが、今のところ、彫刻刀に関しては今の道具で満足しています。

(2006.6.11)

粗彫り

彫刻刀

 

 

 

 

LIBRO 展示 6月1日〜21日

 

友人の紹介で、広島パルコ新館5F、LIBRO(本屋)内CAFEにて、少し展示をする事になり、今日、搬入に行ってきました。LIBROは洋書やデザイン書などが充実しているので好きです。

 

箱、盛器、お椀など、13点を展示しました。

漆は写真と実物の質感が全く違うので、写真で見せると「まぁこんなもんか」と思われてしまいそうで、あまり好きではありません。

 

今日、作品を並べてみて、改めてそう思いました。

機会があればなるべく実物を見てもらいたいです。

キャプションや経歴などの小物の制作から、展示まで全て自分でやるので、大変でしたが、自由にやれて楽しかったです。

名刺の代わりにはがきサイズのカードを作成して、置いておきました。少しでも興味を持ってくれた人がこのHPまで辿り着いてくれたら幸いです。

(2006.5.31)

カード(クリックで拡大表示)

 

 

 

 

 

 

日本工芸会 中国支部展  

 

今日は日本工芸会 中国支部展の搬入がありました。

広島、岡山、島根、鳥取の4県が中国支部になります。<陶芸・染色・漆芸・木工・人形・七宝>部門で100点を超える作品が展示してあります。

漆は今回は10点が入選でした。

陶芸部門が圧倒的に多いようです。特に岡山の備前焼きが目立ちます。

 

岡山会場では6日間で4.000人を超える来場者があったようです。

 

広島会場は明日23日〜28日です。

お近くにお出かけの際は是非お立ち寄り下さい。

 

 

会場

出品作 彫漆蒟醤水指「山帰来」

(2006.5.22)

 

 

 

ようこそ 広島へ

 

14日(日)、カナダ人のStephenさんというがお見えになりました。彼は量子物理学者であり、大学教授であり、また大の美術愛好家です。1年の数ヶ月間は筑波で研究されるそうです。

 

2年前、Stephenさんは東京で私の作品を見て、他の作品も見てみたいと、高松に会いに来て下さいました。彼の行動力に感謝です。そして、結局、東京で初めに見た作品(右)を買って下さいました。私にエールを送りたいという気持ちを込めて・・・。

世界一(多分私より)その作品を気にってくれたStephenさんに、是非その箱を持っていて欲しいと私も思ったので、大変嬉しかったです。

 

Stephenさん宅  "彫漆箱「藤波」"

Stephenさんはアートと研究は類似点がたくさんあるとよく言います。すごく回り道をする時もあるし、誰の役にも立っていないと感じる事もあるかもしれないけど、大丈夫だと励まして下さいます。

"努力を怠ると、費やした時間も全て無駄になる"といった意味の言葉も教えてくれ、どうしようか迷った時などよく思い出します。

漆を始めてから、良い出会いがたくさん増えました。

(2006.5.16)

 

 

讃岐の漆芸 「器」展

 

5月8日に器展の搬出に行ってきました。

私はパネルと盛器とぐい呑みを2個出品しました。

当初の予定より文様を頑張り過ぎてしまった為、時間が全然足りなくなり、最後の方は不眠不休で、何とか表だけでも見れるようにして送り出しました。

仕舞いには家族を巻き込み、漆以外の作業は手伝ってもらいました。漆も覚えてくれたら助かるのですが・・・。

 

今回は、体調が良くなかったという事もあり、高松に行くのは少し迷っていましたが、やはり行ってみて勉強になりました。先生方にアドバイスをもらえて良かったです。値段設定も勉強になりました。「安くし過ぎる!」とみんなに言われました。

 

なるべく安くする努力をしたい、という気持ちがあっての事ですが、次からはもう少し色んなバランスを考慮に入れて決めます。

独立して一人でやっていると、些細な助言が貴重です。

今回、皆さんのもので売れていたものは「この値段の割には良い仕事してるなぁ」というようなもので、お客さんは「見る」プロだから、本当にシビアだなと思いました。

(2006.5.10)

↑クリックで詳細表示

 

高松天満屋;会場の雰囲気

 

 

 

 

彫漆 ガビ取り

 

彫漆塗り重ねも終盤に入りました。

上塗りをする前に、器物からはみ出て、ガビガビに乾いた漆を取らなければいけません。

 

通常の塗りは、塗った時に器物からはみ出た余分な漆をヘラで取ります。しかし、塗りはどうしても端の方が薄くなってしまいます。彫漆のように何10回も塗り重ねているうちに、その差が大きくなって、下の図のように端がダレてしまします。

 

このように完成してしまうと、作品の印象はしまりがありません。エッジが綺麗に出来ていないと、せっかく文様が上手くても、全体の完成度は低く見られてしまうかもしれません。

これを防ぐ為に、彫漆の場合は敢えて器物からはみ出して、塗り重ねをして、終盤に「ガビ取り」をします。

 

ガビガビ部分にあたる言葉を先人は命名しなかったようで、今のところ、これを取る作業は「ガビ取り」という名で伝承されています。

 

上手く写真が撮れなかったのですが、実際にガビガビ部分は、すごいガビガビでボコボコです。他に良い言葉は当てはまらないかもしれません。

 

「ガビ取り」ような些細な事の一つ一つが、大切な技術の伝承なのかもしれません。

  (2006.4.19)

 

 

 

 

彫漆 塗り重ね

 

公募展やグループ展の為に彫漆の作品を幾つか作っています。今はそれらの塗り重ねをしています。

器物によって塗り重ねのパターンは違いますが、概ね約50回、1日1回塗り重ねをします。

 

塗り重ねは、塗りと水研ぎの繰り返しです。

塗りの約15時間後(研げる程度に乾いている)に水研ぎし、湿ムロ(乾燥に要する適度な湿度65〜80%と温度20〜30℃を満たす戸棚)で、十分に乾燥させ、再び塗ります。

 

厚い箇所があったり、あまりに短時間で乾くと、表面だけシワシワに乾く「縮み」という現象が起こります。

縮んだ所は研いで無くし、また塗り直しです。1日が無駄になってしまう「縮み」は塗りの大敵です。

 

1回分の漆の層は0.03mmといわれていますが、その時の気候や、混ざっている顔料によって乾燥速度が変わる為、その都度、塗りの厚みを調節する必要があります。勘だけが頼りです。たまに失敗して縮んでしまいます。

塗重ね器物 左から;

盛器、水指、ぐい呑み×2、短冊箱

水研ぎ;耐水ペーパー#600

 

塗り重ねが終わると彫刻作業に入ります。もし、塗り重ねを1日怠ると、彫刻作業に入るのが24時間遅れます。締め切り前になると1時間でも多く時間が欲しくなり、その時になって、後悔したくないので、いくら体調が悪くても、出掛ける用事があっても、塗り重ねだけは毎日欠かさず行います。

縮み

(2006.4.11)

 

 

 

 

北岡先生 祝賀会〜退官記念〜

 

高松の料亭二蝶で、北岡先生の退官記念祝賀会がありました。

北岡先生はこの3月で、香川県漆芸研究所を早期退職され、4月から非常勤講師で週2日の勤務となります。来年1月に日本橋三越での個展が控えている為、少しでも早く作家活動に専念したいとの事。

 

北岡先生の奥様にきちんとお会いしたのは、ほとんど初めてでした。優しく、美しく、噂通りの素敵な方でした。

 

二蝶の女将さんはピンポン外交で、北京に行かれているとの事。お会いできなくて残念でした。

 

内輪だけでの会だったので、1次会からかなりの盛り上がりでした。

 

2次会、3次会、4次会・・・と続き、解散したのは3時過ぎだったでしょうか?

高松での飲み会はいつもそんな調子です。翌日も仕事があるのに、皆さんとっても元気です。

(2006.4.2)

北岡先生と奥様

二蝶で働く真漆会メンバーと

 

 

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