
会場にお越しいただけなかった方にも、作品に込めた想いや制作の背景をお伝えしたく、当日の原稿をこちらに掲載いたします。長文となりますが、作品の写真と合わせてお読みいただけたら嬉しいです。
結婚を機に現在は東京に住んでおります。2011年からは3人の子育てで一時制作をお休みしていましたが、2024年の春から制作活動を再開いたしました。今年3月のアートフェア東京で展覧会に復帰し、現在は展覧会の出品作品を作る傍ら、身に着けられるアクセサリーも作り、私自身が運営するオンラインショップで発表しています。
漆という自然素材の美しさを大切にしながら、過去から未来へのつながりを感じていただけるような表現を目指しています。
一つ目が、本体の形を作る「乾漆(かんしつ)」という技法です。 乾漆は、粘土や石膏などで作った原型のうえに数枚の麻布を漆で貼り重ね、乾いた後に中の型を取り除いて器を作る技法です。木とは異なり、滑らかな曲面を作ることができるのが特徴で、私は普段この技法を使って素地を作っています。今回は球型のスチロールを一部削って原型を作りました。
二つ目が、天板の装飾に用いた「彫漆(ちょうしつ)」という技法です。 濃いブルーから白へ変化するグラデーションの層を約50回塗り重ねています。厚さにして約3ミリの漆の層を、刃物で精密に彫り進め、数種類の砥石で彫った部分を研ぐことで、柔らかな陰影と色の変化を生み出しています。私はこの彫漆の技法をメインに作品を作っています。一日1回しか塗り重ねが出来ないので、非常に制作日数がかかる技法です。
手作業ならではの立体感や、漆の層が生み出す豊かな表情を感じていただければ幸いです。
当日の様子を撮影してくれた元レポーターの友人、そして温かく耳を傾けてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
会期初日には全国から作家の皆様が集まり、研究会や懇親会も開催されました。 いつもは自宅の工房にこもって一人静かに制作をしていますが、尊敬する先生方や先輩方と久しぶりにお会いでき、まるで年に一度のお祭りのような、刺激的で充実した日々でした。
東京展の後は、全国10都市を巡回いたします。 会場の都合により全作品が並ぶのは東京展のみとなりますが、私の作品は宮城、島根、香川、広島の4会場にて展示される予定です。お近くの巡回展にお越しの際は、ぜひお立ち寄りいただければ幸いです。
全国巡回展の詳細はこちら(展覧会公式サイト)よりご確認ください。
今年3月のアートフェア東京から始まり、7月の日本伝統工芸展の搬入まで、この1年間はこれまでにないほど怒涛の日々でした。
大きな山場を無事に越え、ようやくほっと一息ついたところです。
緊張感のある過密スケジュールからは一旦解放されましたが、次の展覧会に向けてしっかり制作していきたいと思います。
引き続き温かく見守っていただけましたら幸いです。
2026.9.16
