日本産と中国産の漆

先日、14年ぶりに漆を注文しました。
15年位前の漆は粘度が高くなり、塗りにくく、成分が凝縮したせいか、薄く塗っても縮んでしまいます。下地用の生漆は乾固に時間がかかり、使いにくい。漆は早く使い切った方が良いと思いました。新しい漆が使いにくい時は、古い漆を混ぜて調整する時もあるそうですが。

日本産と中国産の漆

小さなチューブに入った物が日本産です(左2本)。プラスティックの袋に入った物は初めて買ました(右)。


こちらのページに詳しく書きましたが、日本と中国のウルシの木の遺伝子は同じです。
香川県漆芸研究所では上塗りの黒呂色漆と仕上げ用の生漆は日本産を使っていましたが、特に黒呂色漆は中国産との違いは分かりませんでした。
しかし、両者は樹液の採取方法が違うので、不純物の多寡の差はありそうです。中国産の漆も精製は日本でされていると思いますので、精製された黒呂色漆はその差が分かりにくく、未精製の生漆は多少の差があるのかもしれません。
価格は、日本産の漆は中国産の約4.7倍です。(上黒呂色漆100gの場合、日本産16,500円、中国産3,520円で比較しました。)1平方メートルあたり30gの漆が必要とされています。黒呂色漆は最低でも4回は塗り重ねます。
仕上げに使う生漆は、私も日本産の漆を使っています。日本産と中国産の漆の差については、もう少し勉強したいと思います。

文化庁は2018年度から、国宝や重要文化財の建造物の保存修理には原則として日本産の漆を使用することを方針としていますので、日本産の漆は保存修理の需要が増え、供給は減る中で、更に値上がりしたのかもしれません。中国産もここ15年で約2倍の値段になっています。インフレの側面もあるかもしれませんが...。

全ての工程で日本産の漆を使う方もいらっしゃいます。それは本当に素晴らしい事だと思います。
小西美術工藝社の社長でもある著名なデービッド・アトキンソンさんは、著書(国宝消滅―イギリス人アナリストが警告する「文化」と「経済」の危機)の中で、日本人が作ったとても高額な漆器に中国産の漆が使われているのは、残念だとおっしゃられていました。買い手は当然日本産の漆が使われていると思っているからです。
商品として、価格が折り合わないのであれば、日本産の漆だけで作られた製品もオプションで選択できれば良いと提案されていました。
彫漆に関しては、元々は中国の技法でもあるので、私はこれまで通り、仕上げ以外は中国産の漆を使う予定ですが、技法によっては、デービッドさんがおっしゃられたようにオプションで日本産の漆のみを使った物を作れたら良いと思います。(デービットさんの本は面白かったので、この後、何冊か読みました。)
また、日常使いの小物の共箱(桐箱)もオプションにしようかと考えています。


漆の作業のための吸付き吸盤。らっぱ型吸盤、吸付ゴム球とも呼ばれています。

吸付き吸盤、ラッパ型吸盤、吸付ゴム球などと呼ばれています。


器物を塗る時に使う吸付き吸盤も買いました。これが4千円近くで、昔はそんなに高くなかったので、少しビックリしました。
でも、商品があって良かったです。これがないと作業になりません。5~7年位でゴムが劣化して、使えなくなるので、買い置きしておく訳にもいきません。これからも生産され続けるよう願っています。


2024.12.16