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漆の特徴Features of urushi

10年以上かけて育った1本のウルシの木から200ccしかとれない貴重な樹液です。

 縄文時代から重用され、日本らしい文化として現代まで連綿と受け継がれてきました。透明感があるその艶は何ものにも代えがたく、しっとりとした質感は使う人の心を潤します。

ウルシの木

 アジアで広く自生するウルシの木から採取された乳白色の樹液を精製した物を塗料や接着剤として使用しています。この漆液をろ過し、木の皮などを取り除いたものを「生漆(きうるし)」と呼びます。それを精製して、黒色の漆や透明漆などが作られます。 漆の透明感がある光沢は独特で、この透明感が他の塗料にはない美しさを生み出しています。
 ウルシの木は、日本や中国、東南アジアなどで生育し、以前は日本各地で漆を生産したようですが、現在では日本で使う漆の90%以上が中国から輸入されたものです。 日本産の漆は希少で価格も高い(中国産の5倍程度)ので、主に神社仏閣の補修などに使われています。
 中国、韓国、日本のウルシの木は同じDNAを持っている為、その性質はかなり似ています。採取した国や産地により、また採取した年代や時期によって、 漆の成分(ウルシオールという樹脂分、水分、ゴム質、酵素など)が異なり、粘度や乾きの早さなどが違ってきます。それらの性質を把握し、異なる漆を組み合わせるなどして、使用目的に合った漆を利用します。


性質

 塗料としてのイメージが強いと思いますが、硬く固まる性質を活かして、素地(乾漆)を作ったり、金紛や薄貝を貼る目的で接着剤として用いる事もあります。この接着力を活かして、金継ぎでは陶器同士を接着します

 また、漆は精製すると透き通った飴色になるので、顔料を混ぜる事で、絵具のように自由な色漆を作り出す事が出来ます。硬化後、時間が経つと、漆の色は透明に近くなり、顔料の色味が徐々に強くなります。ただし、純白色の顔料を混ぜても、茶色がかったような色になってしまうので、純白色の色漆を作るのは困難です。また、早く乾くと漆の茶色が濃くなり、ゆっくり乾くと透けが良くなるので、色漆はゆっくり乾かした方が発色が良くなります


黒呂色漆を漉している所


乾くメカニズム

 一般的に「乾く」というのは、水分が空気中に蒸発する、というイメージがありますが、漆は逆で、空気中の水分を取り込んで乾きます。その為、正確には、漆は「乾く」ではなく「固まる、硬化する」と言います。
 漆の硬化とは、成分の酵素(ラッカーゼ)が、水分の中の酸素を取り込んで反応し、ウルシオールが液体から固体になっていくことです。


 漆を硬化させるには、温度が25~30℃、湿度が70%程度が最も良いとされ、梅雨時期は特に硬化が早くなります。それ以外の時期でも漆を硬化させるため、「漆風呂」「むろ」と呼ばれる漆用の乾燥室を使います。「むろ」は「風呂」が訛ったものです。これは密閉できる木製の棚のようなもので、内部の壁面に直接水分を与えたり、下部に濡らした布や水入りのトレイを置き、湿度を調整します。

自作の漆むろ 漆風呂

自作の漆風呂。上が水分なしの「からむろ」で、下が水分ありの「湿しむろ(しめしむろ)」です。

段ボールや衣装ケース等で代用可能ですが、木製に比べて湿度の調整が難しくなります。また、時間をかけて硬化させたい時の為に、「漆風呂」とは別に、湿度を与えない「からむろ」という乾燥室も必要です。
からむろは上下の向きを回転できるようにしてあります。逆さにして乾かさないと、箱の四隅などに漆が溜まって、縮むという現象がよく起こる為です。
ゆっくり乾かせば、刷毛目は消えますが、側面の漆は下に垂れてしまいます。これを防ぐために数時間おきに上下の向きを変える必要があります。薄く塗れば、上下の向きを変える必要はありませんが、塗り立てや高さがある箱を作っていると回転むろの必要性を感じるようになります。


漆器のお手入れ

 以下は、一般的な漆器の基本的なお手入れ方法ですが、実際の漆器の種類や状態によって適切なお手入れ方法が異なる場合がございます。漆器の種類や製造元の指示に従い、製品に付属している取扱い説明書を参照してください。

ご使用上の注意
  1. 電化製品
  2. 使用可能の表記がない場合は、直火、電子レンジ、オーブン、食器洗浄機、乾燥機は使用しないでください。

  3. 高温の物
  4. お椀などに熱い物をいれる事は出来ますが、沸騰したての物など非常に熱い物は入れないで下さい。塗面が変色する場合があります。

  5. 金属製カトラリー
  6. 漆の食器には、金属製の箸、スプーン、フォーク、ナイフは避け、木製品のご利用が望ましいです。

  7. お盆・敷膳
  8. 陶磁器類を載せて使用する時は、なるべく接地面が滑らかで軽い陶磁器を選び、傷が入らないようご注意下さい。


お手入れ方法
  1. 乾拭き
  2. 柔らかい乾いた布で優しく拭きます。漆器の表面にホコリや軽い汚れがある場合は、これによって取り除くことができます。

  3. 湿らせた布
  4. 乾拭きで汚れが取れない場合は、軽く湿らせた柔らかい布を使用します。水滴の跡が残らないよう、綺麗に水気を拭き取るようにします。

  5. 中性洗剤の使用
  6. 油汚れなどの場合は、中性洗剤を少量使って水洗いします。洗う前、長時間水に漬ける事は避けてください。柔らかいスポンジや布に洗剤を付け、水またはお湯で洗い流します。水滴の跡が残らないよう、綺麗に拭き取りましょう。食器類は使い終わったら、なるべく早く洗ってください。

  7. 直射日光を避ける
  8. 漆器は紫外線に弱く、長時間の日光にさらされると、色あせや変色が生じる可能性があります。紫外線が当たらない場所で保管してください。

  9. 急激な温度・湿度の変化を避ける
  10. 急激な温度・湿度の変化は素地の木が膨張または収縮し、漆器の表面にヒビが入る可能性があります。湿度・温度が一定している場所での保管が望ましいです。長く使わない場合は、食器棚に少し水の入ったコップなどを置く事で、乾燥を防げます。

    私が製作する木地の漆器は木地の全体(または縁)に布(または和紙)を貼り、木地を補強しています(箸置きなど、一部を除く)。また、乾漆などはこのリスクを軽減させる事ができます。
  11. 保管方法
  12. 重ねて収納する時、傷や衝撃が気になる場合は、漆器と漆器の間に布や紙などをはさみ、陶磁器などを重ねないようにして下さい。 大事な漆器は通気性のある袋や箱に入れて保管してください。

  13. 定期的なお手入れ
  14. 汚れや傷が蓄積する前に、定期的に拭き掃除や手入れを行いましょう。
    艶がなくなった場合や、小さな傷が気になる時は、擦り漆が有効です。30年毎に擦り漆をすると美術品なども安心です。(技法によっては擦り漆が出来ない場合もあります)
    また、漆器に割れやひびが入った場合は、お早めに新しい漆器への交換をお勧めします。 場合によっては塗り直しや修復が可能な場合もありますので、専門業者にご相談ください。


 なるべく長く、綺麗な状態でご利用できるよう、注意点を書きましたが、漆器は本来堅牢な物ですので、普段使いのものはあまり神経質にならず、お気軽にご利用ください。


2024.05.02
2024.06.25